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気ままに読書3 「宇宙になぜ、生命があるのか」

今回、紹介するのは、「宇宙になぜ、生命があるのか」 宇宙論で読み解く「生命」の起源と存在
戸谷 友則著  講談社ブルーバックス(2023年初版)です。

二宮図書館所蔵

■内容紹介(講談社より抜粋)
 地球以外にも「生命の星」は存在するのか? この問いに対して、宇宙物理学者である著者は、現代の宇宙論、そして、有機物にはじまる生命の合成過程をもとに考察していきます。近年の系外惑星探査では、太陽系外にも地球のような惑星がたくさん存在することがわかっています。また、「はやぶさ2」の持ち帰った試料からは、生命の材料となるアミノ酸なども見つかりました。ビッグバン理論、インフレーション理論などの最先端の宇宙論・物理学をもとに、RNAの合成、生命活動のはじまり、それらの発生頻度をあてはめたとき、我々の知る138億年の宇宙には、地球以外にも生命は存在するのでしょうか?

■読後の感想
 生命は地球にしかいないのか? どうして我々は宇宙で孤独なのか?そもそも地球の生命はどうやって誕生したのか。まだ多くの謎が残っています。宇宙物理学者である著者が改めてこれまでの研究成果をざっと振返ります。
 地球の原始生命体は、地球が誕生してからわずか約5億年後に出現したと考えられます。それから40億年かけて進化(=変化)し、今日の多様な生命に至っています。ヒトのDNAは約30億塩基対(30億×2)です。タンパク質の設計図である遺伝子は約2万個です。そのDNAを格納した約37兆個の細胞からできています。DNAのサイズは様々ですが、地球上のすべての生物を遡ると一つの原始生命に辿り着きます。現世生物で最小のゲノムサイズは約200塩基からなるウイロイドと呼ばれる植物病原体です。地球で最初の原始生命は40~100基程度のゲノムサイズだったと考えられています。


・最初の生命はどこでどうやって生まれたのか?
・なぜ地球上の生命のアミノ酸はすべて左巻き、DNA/RNAは右巻きなのか?
・なぜ500種類ほどあるアミノ酸のうち、20種類しか使われていないのか?
・なぜ40億年前の1回だけなのか、もっと頻繁に起きたとしたらどこへ消えたのか?
・なぜ宇宙人は見つからないのか、地球だけが特別な存在なのか?

過去の先人たちの実験結果は、原始地球環境を想定し、放電や高温高圧などでアミノ酸が偶然に合成される可能性を示唆しました。偶然だとするとアミノ酸は右巻きと左巻きは同数だけ生まれるはずです。現在、なぜ左巻きだけなのかの理由は分かっていません。また、地球が起源だとすると、なぜ1回だけなのか、他にも違った生命が誕生してもよいはずです。偶然、1種類の生命しか生まれなかったか、または他の種類は生き残れなかったということになります。自身の複製が可能なRNAとなると、少なくとも40個以上のヌクレオチドが意味を持った長さで生成されなくてはなりません。その確率はL!分の1(LはRNAの長さ)のように稀にしか起こりえません。(1/40!は、10のマイナス47乗ほどになります。)

ここで、著者が新しく示したことは宇宙の地平線という観点から計算した生命の発生確率です。宇宙年齢はビッグバンから誕生して約138億年とされています。138億光年離れた遠くの星の光が地球に届く間にその星はすでにさらに遠くに離れています。私達が見ることができる宇宙は、光が届く範囲、つまり宇宙の地平線までの大きさということです。例えば、地球の地平線は身長170cmの人ならせいぜい半径5kmの範囲しか認識できません。その範囲の世界が地球上のすべてだと思う人はいません。本当の地球の大きさを知っているからです。
同様に宇宙の実際の大きさは私達が認識しているよりもずっと大きく、そのスケールで生命誕生の確率を計算してみると十分あり得る値になるということです。宇宙を漂う塵や隕石などに紛れて生命のかけらが地球に届いたとしても不思議ではありません。
皆さんは、地球の原始生命は宇宙からきたのか、それとも地球で生まれたのか、どちらが正しいと信じますか?
(つづく)

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by 清兼